頼む、キミだけのオリジナル辞書を作ってくれ……!!

人それぞれに読む文章の好みというのはあるものだが、私が特に好む文章の一種が、さりげない引用や暗喩や仄めかしに富んだ文章だ。はっきりと『○○みたいな××』などと言わずに、それとなくキーワードをちらつかせたり不自然なルビを振ったりといった少々回りくどい手段で本文とは別のあるテクストの存在を指し示す、そういった技巧が凝らされている文章が私は好きだ。


この手段は回りくどい手段であるから、筆者の意図が読者にひとかけらも伝わらないことが意図されているわけでもなく、さりとて筆者の意図が100%読者に伝わってしまうことが意図されているわけでもないのだろう。だから、引用や暗喩や仄めかしは、明晰で浅薄な知性よりかは、いささか韜晦で深重な知性と相性がいい。例えばみそ氏しましま氏の文章などは、引用や暗喩や仄めかしが深重さと嚙み合っている文章として、ひとつの理想形として私には記憶されている。あなたが読んでどう思うかは知らない*1

 

読む文章の好みとある程度響きあうかたちで、自分で書く文章の好みというのもある。私が好んで書く文章、いや、できることなら書きたい文章というのは、読むときの理想よりも、もっと極端に、過剰に、引用や暗喩や仄めかしを満載した文章というものだ。みそ氏やしましま氏ならば分を守ってするであろう引用や暗喩や仄めかしを、私は分を守らずに、文法上可能な限り詰め込むに詰め込んでみたい。装飾過剰ゴシックな文章をできることなら書いてみたい。


過剰であることは、むろん、文章が“佳く”なるという結果を導かない。過剰を目指すことによって私の文章はひどくなる一方であろう。佳くもならないのに過剰を目指すというのは、一種自己満足的な衝動に過ぎない。だがそれでいいのだ、ブログに書く文章など。他者を楽しませる、愛にあふれた日記ダイアリーである必要がどこにある? 利己的な執着心にまみれた記録ウェブログでさえあればいい。


しかしながら、私の望みは果たされない。ほかならぬ私の無知によって。

言うまでもないことだが、筆者として知識をそれとなく見せびらかすためには、表に見せびらかされるぶんの10倍以上の知識が筆者の頭のうちには必要になる。私はみそ氏やしましま氏のように博識ではないので、彼らと同程度の仄めかしを行うことは出来うべくもない。ましてや彼ら以上になどとは!

 

ま、無知な己の限界を悟ったにしても、そこで希望がすべて絶たれるというものでもない。希望はつづくのだ、私の理想が完ぺきには再現できないとしても、少しでも理想に近づける手段はもろもろ検討できるのだから。この手段の検討と構築が今日の記事の主題である。

 

  • 手段① もっと知識をつける

この手段は忘れてはならないが、別の手段も持っておけ。

  • 手段② いかにもありそうだけど実在しない引用先をでっちあげる

最終手段。
名誉のために言っておくと、私はまだこの手段を使ったことがありません。たぶん。 

  • 手段③ 引用や暗喩や仄めかしをしやすい媒体を選ぶ

仮に豊富な知識を持っていたとしても、引用や暗喩や仄めかしを表現しづらい媒体では筆者はそれを表現できない。具体的に言えば、noteやアメブロのような、ルビもふれない脚注もリンクできない媒体を使っていると、仄めかしの幅が非常に制限されてしまう*2。逆に言うと、私がはてなブログを使っている理由の第一は「ルビがふれるし脚注もリンクできる」ということにこそある。はてなブログさんいつもありがとうございますこれからもよろしくお願いいたしします。
特にルビというのはいい。ごちゃごちゃと過剰にふられたルビは、文章を全く佳くしないが、必ずや読者をして目を凝らさせる。およそルビをふって書かれた言葉はすべて宝石ジュエリーであるのだと言っても過言ではないだろう。

 

ここまでの3つはいままでも私の考慮のうちにあった手段である。これらの手段を極めていく(あるいはまだまだとっておく)ことはこれまでも大事であったし、これからも大事であり続けるだろう。
しかしながら、何事も、いつまでもいままで通り行くとは限らない。情勢が変化の兆しを見せるならば別のやり方を探さなくてはならない。
昨今世間に目立って見える変化と言えば、例えばAIの技術の進展などであろう。たいていの場合、AIは変化を味方につけてしまうことにおいて比類なき力を発揮するので、いまは文章AIが引用や暗喩や仄めかしなどを得意としないとしても、近未来の文章AIが引用や暗喩や仄めかしを得意とするであろうことは間違いない。そこで私は先日、AIが、マザーAIが、私に代わって私の理想の文章を大量生産する未来に少しだけ先んじて、新たな手段を第4の手段として検討することにした。その手段とは、AIやマザーAIのやり口を少しだけ真似た、しかしいかにも人間的な手段である。

 

  • 手段④ 必要な引用先を効率よく思い出すためのツールを使う

私がイメージしているのはこういうことだ……私が気のおもむくままに文章を打ち込んでいくと、打ち込んでいくにしたがって、打ち込んだ単語に関連のある名句やキーワードが私の文章の脇に自動的にリストアップされていく。私はそのリストをちらちら見ながら、「お、これはいま引用できるぞ」などと思ってその名句・キーワードを引用していく。そんなことを可能にするツールがあったら便利だろうな、と。そして、もう少しヨクバルならば、そこで表示される名句やキーワードは、シェイクスピアゲーテとかいった定番の引用先ではなく、もっとニッチな需要に答えた引用先だったらいいな――例えば私にとっては、ウルトラマンに登場するクリシェであるとかプリキュアに登場するエピソードを引用先にしてしまいたい――とも思う。

 

そういうわけで。
じゃあ自分でなんとか作ってみるか、と思い、プログラミングを勉強し始めたのが1ヶ月ほど前のこと(言語はJavaとかいうのにしました)。勉強と何度かの練習を挟んで、つい先日、私の求めるツールがいちおう最低限の完成をみた。これこそmy new gear......その名もGammaAllusionである。

 

https://ux.getuploader.com/changer_observatory/download/1

↑こっからダウンロードできます

Windows用です これがMacでも動くようなものなのかどうか全くわかっていない

 

概要

文章を打ち込んでいくと、文章に出てきた単語に直接関係するフレーズやキーワードをリストアップして表示してくれるツール。関係するフレーズやキーワードの設定は、Excelを使って自分で追加・調整することができる……たぶん。
現状用意しているのは『プリキュアシリーズ関連フレーズ・キーワード』のみ。だいたい800種類くらいの言葉に反応して200種類くらいのプリキュア関連フレーズ・キーワードを返してくれる(実際使ってみるとわかるがこの程度の単語数では全然役に立たない)。

 

使い方

  • 上のスロットで辞書を選びます(現状は『プリキュアシリーズ関連フレーズ・キーワード』対応辞書のみ)。

  • 下のテキストエリアに文章を打ち込みます。打ち込むごとに上の3つのゲージがたまっていきます。

  • やがてゲージが満タンになり、その後さらに入力するとゼロに戻ります(満タンじゃなくても[検索]ボタンを押すとゼロに戻ります)。ゲージがゼロに戻ると、入力している文章に含まれる単語が集計されて、その単語の関連フレーズ・キーワードがリストに表示されます。
    なお、一番左のリストは「現在入力している箇所の直前50文字」の関連フレーズ・キーワードを、真ん中のリストは「直前250文字」の関連フレーズ・キーワードを、一番右のリストは「直前1000文字」の関連フレーズ・キーワードを表示します(この文字数は50文字から無制限まで選べます)。

ね、カンタンでしょ?
ちなみに、形態素解析にはkuromojiという神システムを利用させていただいています。自プログラムにkuromojiを組み込むだけで精度の高い形態素解析ができるのすごくないですか。プログラミングをする人からしたらひょっとしたら普通なのかもしれないですけど、プログラミングとかほとんどしたことない自分にはけっこうな衝撃でした。

 

 

 

 

いま私は2つの気持ちを強く感じている……一つ目は、プログラミングというやつを勉強し始めてから初めて、一個のツールを(いちおうは)完成させたことへの達成感・満足感。そして二つ目は、こんなツール要るのか、という疑念。誰がこんなツール必要とするんだろう、という疑念。誰が、という以前に、そもそも自分が、このツールを使うのだろうか、という疑念。

 

俺からみんなへのお願いだ!

  • ① このツールを使って文章を書きたい人は遠慮なく使ってくれ
    そしてできればこのツールを使って書いた文章を俺に教えてくれ。こっそり読んでにやにやするぞ。
  • ② キミだけのオリジナル辞書を作ってくれ
    前述したように、いまはまだプリキュアシリーズ対応の辞書しかないし、その辞書もまだまだ小さすぎて使い物にならないぞ。みんなのオリジナル辞書を作ってくれ。そしてできれば俺に見えるところで公開してくれ。ウルトラマン対応辞書とか仮面ライダー対応辞書とかの場合はたぶん俺自身も使わせてもらうぞ。
  • ③ なんならGammaAllusion本体を改良してくれ
    ソースコード公開したら誰か改良してくれたりするの? 助けてくれ。

そんなこと以前に、プログラミングなんて初めてなので、本当にこれが他人のパソコン上でも動くのかどうかから全く自信がありません。DLしてみたけど全然動かなかったら殺してください(嘘)。いや勝手に修復してください(無茶)。

みんな、頼んだぞ!!!!!

 


(完)


(続編はありません)

*1:ひとの文章を読んで韜晦に思うかどうかは、当たり前のことだが、筆者の意図よりかは読者の知識量の多寡によって決まる。私はみそ氏の文章を読んで「たぶん俺はみそ氏が仕込んだネタの50%くらいしか理解できてないな」と感じてみそ氏の文章の“韜晦さ”を味わうのだが、それは単に私がみそ氏の想像よりもずっと無知であるというだけのことなのかもしれない。かもしれないというか、それは間違いなく一面の事実ではある。

*2:厳密にはnoteやアメブロにもルビや脚注のやり方が存在するのかもしれない。そこらへんよく知らない。